眠れないと気持ちよく目が覚めなかったり、1日中頭がぼんやりしたりとなかなか調子が出ず、イライラしてしまうかもしれません。また、眠れない時に悩み事について考え込んでしまったり、眠れないことが気になってかえって眠れなくなることもあるかもしれません。
もし眠れない原因がストレスである場合は、その状況が続くことで眠れないことが続いてしまうこともあるかもしれません。この記事では、ストレスが睡眠におよぼす影響と、睡眠障害について解説し、すぐに取り組みやすい10の対処法を紹介します。
ストレスで眠れない原因とは?ストレスと睡眠の関係
睡眠で癒されるのは、体の疲れだけではありません。睡眠は脳を休めるはたらきもあり、日中仕事などで乱れた自律神経やホルモンバランスを整える役割も担っています。寝不足で集中できなかったり、体がいつもの調子で動かなかったりするのはこのためです。
なかでも自律神経の乱れは、シフト制の仕事などによる不規則な生活リズムや、心理的なストレスが原因といわれています。しっかり睡眠を取れない状態が続くと、自律神経がより乱れてしまうこともあるため注意が必要です。
通常、眠りにつくときは、体をリラックスさせる副交感神経が優位に働きます。しかし、ストレスを抱えていると緊張状態が続き、交感神経が優位になるためなかなか眠れません。
眠れたとしても短時間だったり、眠りが浅かったりするため、十分に回復できないまま、朝を迎えてしまいます。
本来、ストレスを癒すための睡眠が、ストレスによって十分に得られなくなるのはなんとも皮肉なことです。「ちょっとした寝不足だから」「しばらくよく眠れていないだけ」など軽く捉えずに、深刻でないうちに適切な対処をすることが大切です。
ストレスで寝れない場合は睡眠障害の可能性がある
もし最近、ストレスで毎日あまり眠れていないと感じていたら、睡眠障害の可能性も視野に入れておく必要があるかもしれません。
睡眠には心身の回復や免疫機能の強化、記憶の定着などの働きがあるため、あまり眠れない状態が続くと仕事や勉強など日中の活動に支障が出るだけでなく、仕事でのミスやメンタル不調の原因になる可能性もあります。
ここではまず、睡眠障害の概要や症状について解説します。
睡眠障害とは
睡眠障害とは、自分の睡眠についてなんらかの障害のある状態をいいます。ただ一口に睡眠障害といっても、その症状はさまざまです。
眠れない状態や寝過ぎてしまう状態、睡眠が昼夜のサイクルと合わない状態など、状態は違ってもうまく眠れないという意味では同じ種類の障害といえるでしょう。
睡眠障害による問題は、ただ体調を崩すことだけにとどまりません。仕事でのミスが続いたり、イライラすることで人間関係が悪化したり、ストレスから暴飲暴食やアルコールの過剰接種を引き起こしたり、うつ病などの精神疾患につながることもあります。
「たかが睡眠」などと、軽視するのは危険です。あまりうまく眠れない日が続いていればなおさら、睡眠障害の可能性も視野に入れ、より良質な睡眠が取れるよう日頃から意識することが重要です。
睡眠障害の症状例
睡眠を改善しようとするとき、まずどのような問題があるのかを知る必要があります。睡眠障害は、「睡眠に関する障害」をまとめた呼び名であり、その症状はまちまちです。
ここでは代表的な睡眠障害の症状例を示し、それぞれ原因について解説します。
不眠症
夜寝つきが悪い、眠ってもすぐ目が覚めてしまう、眠りが浅く疲れが取れない状態が不眠症です。不眠症だと、日中「集中できない」「ひどい眠気に襲われる」「いつも体がだるい」といった症状が現れます。
不眠症は主に以下の4つのタイプに分類されます。
- 入眠困難:床について30分〜1時間以上眠れない
- 中途覚醒:一度眠っても、朝までに何度も目が醒める
- 早朝覚醒:起きたい時間より2時間以上早く目が覚めてしまい、その後眠れない
- 熟眠障害:睡眠時間は十分だが眠りは浅く、熟睡した感じが得られない
これらのタイプは1つだけでなく、複数が同時に現れる場合もあります。
また、不眠症には、以下の4つの原因があるとされています。
- 環境要因:時差・寝具の変更・気温(主に暑さ)・騒音・部屋の明るさ など
- 身体要因:年齢・頻尿・かゆみ・痛み など
- 精神的要因:悩み・落ち着かない・緊張によるストレス・睡眠へのこだわり など
- 生活習慣の要因:飲酒・喫煙・カフェインの摂取・薬の副作用・運動不足 など
部屋を暗くして床に入る、規則正しい生活を心がけるなど、ちょっとしたことで改善する可能性はあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠呼吸障害の1つで、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう障害です。
その基準は、1時間あたり5回以上の無呼吸または、低呼吸(呼吸量が正常の半分以下の呼吸)があることとされています。また、睡眠時無呼吸症候群の95%が、閉塞性睡眠時無呼吸症候群であり、これは高血圧や虚血性心疾患、脳梗塞の要因となることがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、眠りが浅いことによる日中の眠気や大きなイビキ、睡眠中の窒息感やあえぐような呼吸、覚醒時の倦怠感、頭痛などです。眠っている間に症状が現れるため、本人が自覚しにくいという特徴があります。
これらの症状は、気道が閉じてしまうことによって起こります。その原因として、肥満や大きく太い舌、小さい顎などが挙げられます。
概日リズム睡眠覚醒障害
人間の体はおおむね24時間周期で生理機能などを調節する体内時計が備わっています。体内時計によって、朝日が上ったら覚醒し、夜になったら眠るよう調整されていますが、これがうまく調整できない場合、仕事や日常生活に支障をきたします。これが概日リズム睡眠覚醒障害です。
概日リズム睡眠覚醒障害には、主に次の6つのタイプがあります。
- 極端な遅寝遅起き
- 極端な早寝早起き
- 不規則な睡眠と覚醒
- 睡眠・覚醒のリズムの遅れ
- 夜勤などによる不眠や過剰な眠気
- 海外への渡航などによる不眠や過剰な眠気
時間のずれ方や原因に違いはありますが、睡眠と覚醒のリズムを思うようにコントロールできないという点が共通しています。
ナルコレプシー
ナルコレプシーは、次のような特徴的な症状を示す睡眠障害です。
- 睡眠発作:日中に突然眠たくなって眠ってしまう
- 情動脱力発作:笑ったり驚いたりして感情が動くと突然体の力が抜けてしまう
- 睡眠麻痺:入眠前後または起床直後に全身が麻痺し、体が動かせなくなる
- 入眠時幻覚:入眠時に鮮明な幻覚が見える
ナルコレプシーの有病率は、欧米に比べ日本人はやや高いという傾向があります。原因とされているのは、覚醒状態を維持するためのオレキシンニューロンの機能不全です。
睡眠関連運動障害
睡眠関連運動障害は、睡眠中や睡眠の前後における比較的単純な四肢の動きを特徴とする睡眠障害です。主な疾患として、レストレスレッグス症候群と、周期性四肢運動障害があります。
レストレスレッグス症候群は「むずむず脚症候群」ともいい、床に入ってしばらく安静にしていると、足がむずむずするように感じ、症状を抑えるために体を動かしてしまうことで入眠が阻害されてしまう障害です。体内の鉄欠乏や、ドパミン量の低下が関係しているといわれています。
また周期性四肢運動障害は、睡眠中、意図せず下肢が細かく震え始め、それが繰り返し起こることで覚醒したり眠りが浅くなる睡眠障害です。
睡眠時随伴症
睡眠中に起こる心身の機能異常を睡眠時随伴症といい、とくに高齢者にはレム睡眠行動障害がみられることがあります。
通常レム睡眠では夢を見ても体は動きませんが、レム睡眠時に夢と一致する異常行動や大声での寝言がみられるのがレム睡眠行動障害です。なかには一緒に眠っている家族にケガをさせたり、家具を壊したりすることもあります。
レム睡眠行動障害は、レビー小体認知症やパーキンソン病など神経変性疾患の前駆症状として現れることがあります。
ストレスで眠れないときの10の対処法
慢性的ではなくても、今抱えているストレスで眠れないといったことはよくあります。一時的なものであれば、環境が改善されることで睡眠の質を向上させたり、あるいはぐっすり眠れるようになるかもしれません。
ここでは、睡眠を改善するための具体的な対処法を10個紹介します。簡単にできそうなものからぜひ試してみてください。
1.リラックスする
眠れない時に意気込んで眠ろうとしても、眠れないことが気になってしまいかえって眠れなくなることがあります。眠りたいときは、自然な姿勢で心を落ち着け、リラックスすることが大切です。
そのため「もう眠らないと明日起きられない!」などと焦ってしまうと、余計に眠れなくなってしまいます。
好きな音楽をかけてみたり、読書をしたり、心身をリラックスさせるようにすることが大切です。まずは、深呼吸するなどして心を落ち着けるようにすると良いかもしれません。
2.呼吸を整える
心身をリラックスさせ、眠りやすくするために、呼吸を整えることも効果的です。
呼吸法の中でも、腹式呼吸は副交感神経を整える効果があり特にオススメです。腹式呼吸は、お腹をへこませて息を吐き、お腹を膨らませて息を吸う呼吸法です。
その際、吐き出す時間を長くするのがコツです。息を吸うときの倍ほどの時間をかけてゆっくり吐きましょう。吐く息と一緒に、頭に浮かぶ嫌なことも吐き出すようにすると、頭がスッキリしてより眠りやすくなることも期待できます。
3.ツボをおす
頭頂部にあるツボ「百会」は、おすと心を落ち着かせる効果があるといわれています。百会は、「頭頂部の真ん中の少し凹んでいる部分」にあるといわれています。
おすときは両手の指や手のひらを使い、心地よく感じる程度にやさしくゆっくり、息を吐き出しながら、じっくり数秒間かけるようにしておすとより効果的です。おした後に、軽く息を吸うまでをワンセットとして、数回繰り返してみましょう。
4.就寝前はスマホやパソコンを見ない
目がさえてしまって手持ちぶさたになると、無意識にスマホを手に取ってしまうこともあるのではないでしょうか。しかし、寝る前には、スマホやパソコンを見ることでかえって眠りにくくなります。
スマホやパソコンのディスプレイが発するブルーライトには覚醒作用があり、見続けていると体内時計が「今は昼間」と勘違いして寝つきづらくなってしまいます。
5.快適な睡眠のための空間を用意する
スムーズに入眠するには、次のような項目をチェックし、眠る空間を快適にしておくことも大切です。
- 温度:エアコンで快適に眠れる室温に調整する
- 湿度:夏は除湿機、冬は加湿器を使って50〜60%程度に調整する
- 部屋の明かり:真っ暗が不安であれば、不安を感じなくなるくらいまで明るくする
ただ、快適な睡眠のための条件は人によって違います。自分が眠りやすい温度や湿度について記録を取るなどして調べてみるのもよいでしょう。
6.睡眠前に軽く運動する
睡眠には適度な運動が効果的といわれますが、睡眠前は激しい運動ではなく、ストレッチのような無理なくゆったりとできる運動がオススメです。
ストレッチは体のさまざまな筋肉の緊張を緩め、副交感神経が優位になることでリラクゼーション効果が期待できます。全身を30分ほどかけてストレッチするとより効果的ですが、あまり時間が取れない時は、気持ちよく背伸びするくらいの簡単なストレッチから始めてみると良いかもしれません。
7.ぬるめのお風呂に入る
スムーズに睡眠に入るには、ぬるめのお風呂に入るのも効果的です。具体的には、眠りたい時間の1〜2時間ほど前に、あまり熱さを感じない40度程度のぬるめのお湯に、ゆったり湯船につかります。
ぬるめのお湯につかると、リラックス効果で副交感神経が優位に働くため睡眠に入りやすくなり、さらに一時的に体の奥の体温を上げ、しばらくして下がることで眠気が起こりやすくなります。
8.生活リズムを見直す
不規則な生活リズムを見直すことで、眠りにつきやすくなります。
たとえば遅い時間の夕食が多かったり、頻繁に夜遅くまで起きていたりすると生活リズムが乱れ、日中眠いだけでなくイライラしたり、思うように体が動かせなくなったりしがちです。
生活リズムを整えるために、仕事や休日に関係なく決まった時間に眠り、決まった時間に起きることが重要です。
9.感情を紙に書き出してみる
眠れない原因として、悩みについて考えすぎているという場合もあります。とくに、不安を抱えたり悩んだりしていると脳は興奮し、リラックスできません。
そのようなときは、今感じていることを紙に書き出してみます。書き出すと心の中にあったものが文字にすると、自分を客観的に見ることができます。見方が変われば新しいアイデアや視点が生まれ、気づかなかった解決法を思いつくかもしれません。
書き出すときは、できるだけ短い文章にするのがオススメです。長い文章は、書くときに脳を使うため覚醒してしまう可能性があります。できるなら、単語レベルまで短く書くようにしましょう。
10.カウンセリングを受ける
眠れない原因がストレスや不安や悩みの場合は、、カウンセリングを受けるという方法もあります。カウンセリングでは、カウンセラーがどんな悩みも受け止めてくれるので、吐き出すだけで不安が和らぐことも期待できます。
また、カウンセラーは客観的に話を聞いてくれるので、対話の中で悩みを整理できたり対処法のヒントを得るきっかけにもなります。眠れないほどの悩みや不安が解消されることで、より良い睡眠をとることにつながります。
ストレスで眠れないときはカウンセリングを受けてみよう!
人間の毎日の暮らしにとって睡眠は、心身の疲れを取る、自律神経を整えるといった重要な役割を果たしています。
睡眠の質が下がったり、寝付けないことでうまく休息が取れない場合、生活にさまざまな影響が出てしまうため、できるだけ早いうちに対処することが大切です。
睡眠の質を改善するために、寝る前のストレッチやぬるめのお湯への入浴、睡眠のための空間の整備などが効果的です。ただし、眠れないほどの悩みがある時は、心の専門家のカウンセリングを受けてみることをオススメします。
睡眠がなかなか改善できないときは無理をせず、できるだけ早めに心の専門家であるカウンセラーへ相談してみましょう。
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