過労の代表的な初期症状は息切れやめまい、頭痛、イライラなどです。これらの兆候を見逃すと、いつの間にか状態が悪化し、過労死や突然死を引き起こすリスクがあります。
今回は、過労の初期症状や原因、過労死を起こさないためのポイントについて解説します。
過労における現状

過労が心身にもたらす負の影響は甚大です。うつ病や統合失調症などの病気でなくとも、決して侮ってはいけません。
長時間労働や慢性的な残業を強いられた結果、脳や心臓に異常が出て亡くなる過労死が頻発しています。過労による死亡者の推移と、厚生労働省が公表している月80時間以上の過労死ラインへの理解を深めましょう。
過労による死亡者の推移
過労による死亡者数の推移を、厚生労働省が公表している数値を参考に解説します。
日本の自殺者数は1998年以降2009年まで3万人を超えていましたが、2010年以降減少が続き、2015年時点では24,000人余りとなりました。勤務問題が原因の一つと推定される自殺者数は2015年時点で2,159人という結果が出ています。
理由をさらにセグメント別に分類すると、勤務問題のうち「仕事疲れ」が3割、職場の人間関係が2割、仕事の失敗が2割弱、職場環境の変化が1割強という内訳です。
勤務問題が原因と推定される自殺者数の推移を職業別にみると、被用者・勤め人の数が80%以上に達しています。まとめると勤務問題を抱える自殺者数のうち、仕事疲れが原因の割合が最も多く、その大部分を占めているのが従業員です。
過労はビジネスパーソンのサイレントキラーといわれており、本人の自覚がないままじわじわと症状が進行し、表面化したときには重度な病状が生じるという場合も見受けられます。
健康で体力や気力がある人ほど、体内で生じる兆候や異変に気付かず、ギリギリの状態になってから病院を受診することが多々あります。
知らない間に疲労が蓄積してしまうと、何も持病を持っていない人が突如、不整脈や心筋梗塞、脳卒中などで突然死することもあるようです。気付いたときには致命的な状態になってしまうこともあるため、手遅れという事態を防ぐためにも、日頃からのケアが重要です。
月80時間以上の残業は過労死ライン
過労死とは、過度な長時間労働や慢性的な残業を強いられた結果、脳疾患や心不全などによる著しい体調の変化に伴う突然死のことです。月80時間以上の残業は、過労死ラインと定められています。
過労死ラインとは、「直前2か月~6か月間の残業時間の平均が80時間以上」を指し、健康障害を発症して死亡した場合の労災の認定基準です。
このラインを超える長時間労働があると、業務のストレスと死亡の事実に因果関係が認められやすく、会社が従業員に対する安全配慮義務を怠ったとして、労災の保険給付を受けられる場合があります。
過度な長時間労働や休みを取らずに働き続けた結果、脳や心臓に悪影響が生じると過労死を引き起こします。しかし、ダメージが蓄積されていても必ずしも具体的な症状に現れるわけではないため、気が付いたときは手遅れのケースも少なくありません。
過度な残業を強いられている方は、突然死のリスクに備えるため、残業時間が過労死ラインを超えていないかチェックしてみると良いかもしれません。
そもそも労働基準法による時間外労働の上限は、月45時間、年間で360時間です。単純計算で1日2時間程度の残業となり、これが健康を維持して働けるかどうか見極める基準の一つです。
過労死ラインの月80時間は文字通り、健康に重大な影響を及ぼすことを表しています。毎月45時間を超える残業を強いられているなら、過労死ラインに満たなくとも働きすぎといえます。
過労の初期症状

過労死は何の前触れもなく起きる突然死と捉えられやすいですが、実際は体に現れるさまざまな不調のサインを見逃している場合もあります。
最悪の事態を防ぐには過労の初期症状を見逃さず、体に起きている変化を敏感に察知しなくてはいけません。原因となる部位ごとに、過労の初期症状を紹介します。
息切れなど呼吸器や心臓に関する症状
階段を上っただけで息切れする、食欲が出ない、呼吸の苦しさで眠れなくなるなどの心臓が原因の症状が現れることがあるようです。
症状が進行すれば、心筋梗塞をはじめ心不全による急死を引き起こす場合もあり、とくに高血圧や糖尿病の人は過労死リスクが高まります。
激しい運動をしていないのに息切れを起こすのは、心臓や肺に異常が出ているサインです。脈拍や血圧の調整機能を有する自律神経が、過度なストレスによりバランスを崩すことで、息切れや動悸が引き起こされます。
心疾患は、厚生労働省の「脳・心臓疾患の認定基準」で労災認定基準において具体的な疾患の種類が限定されています。
心筋梗塞・狭心症・心停止・解離性大動脈流が対象です。業務による過度なストレスにさらされると、命に関わる病気の発症につながります。
激しい頭痛やしびれなどの脳に関する症状
過労の初期症状として、激しい頭痛や手足のしびれ、ものがかすんでみえるというような、脳血管由来の不調が現れる場合もあります。ほかにも、ろれつが回らない、言葉が理解できなくなる、立てない・歩けないなど明らかにいつもと違う症状が見受けられることも少なくありません。
これらの症状を放置し続けると、脳梗塞やくも膜下出血を発症して突然死のリスクが高まり、たとえ一命を取りとめても後遺症が残る危険もあるようです。
厚生労働省の「脳・心臓疾患の認定基準」では、過労死による労災認定が認められるための脳疾患の種類を限定しています。
具体的には脳内出血・くも膜下出血・脳梗塞・高血圧性脳症の4種類が該当し、これらは脳疾患のなかでも業務の過剰負荷に関連して発症しやすいと考えられるようです。息切れや動悸が続く状態を放置すると、上記の疾患による突然死のリスクがあります。
記憶力やひらめきが低下する、気が利かなくなる、うっかりミスが頻発するなども疲れによる脳の初期症状の一つです。仕事の能率が明らかに落ちはじめるため、注意してください。
イライラなどの精神的な症状
イライラしやすくなる、何をしようにもやる気が出ないなど、精神的な症状が出る場合もあります。過労によるストレスは、自律神経のバランスをも崩しかねません。
精神疾患を発症してしまうと、過労死にならずとも、元気に働けず後の人生に影響を及ぼす恐れもあります。理由もなく涙が出たり、集中力がまったく続かなかったりと精神的な不調が出ているなら、無理をせず休養を取ることがおすすめです。
イライラなどの精神的な障害と関連性が深いと近年注目されているのが、パソコンの長時間連続の使用によるVDT症候群です。長時間同じ姿勢を維持してパソコン画面を見続けていると、頭痛や肩こり、疲れ目などの症状を誘発します。
これらが常態化するとストレスが増幅し、メンタル不調を引き起こします。VDT症候群による悪影響については厚生労働省もガイドラインを発出し、注意喚起を呼びかけているほどです。
そもそも過労の原因とは?

過労は、長時間労働や慢性的な残業によって引き起こされます。無理なノルマをこなすために締め切りに追われる、一人当たりのこなす業務量が多すぎる、人手不足で休みたくても休めないなど根本的な原因は職場ごとに異なるかもしれません。
過労につながる要因を、一つずつ紹介します。
無理なノルマやプレッシャーがある
物理的に達成不可能なノルマを課されたうえ、上司から過度なプレッシャーを受けると、精神的に参ってしまう場合があります。とくに新人や転職して間もない時期の従業員だと、業務に関する要望や不満を伝えようにも切り出しにくく、我慢を余儀なくされるかもしれません。
精神的に追い込まれた結果、自律神経のバランスが崩れ、朝布団から出られない、疲れているのに眠れないなどのうつ病の症状が出る場合もあります。
ノルマが課される代表的な仕事として知られるのが、営業職です。契約件数や売上など具体的な数値として明確化されるため、チームや部署内でできている人・できていない人が可視化されます。
上司から言い渡されるノルマの数値に根拠がなく、理不尽に高すぎる目標が設定されると達成意欲が湧くどころか、モチベーションの低下を引き起こしかねません。
自分だけがノルマを達成できていない状況に焦りを感じ、休日返上で資料作り等に励む場合、過労のリスクが高まるかもしれません。
業務量が多すぎる
一人でこなすのが難しいほど大量の業務を割り当てられ、長時間労働を余儀なくされる場合があります。真面目で勤勉な人だと無理をしてでも締め切りを守ろうとするため、過労死ラインを超えてしまうことも考えられます。
残業ありきの業務分担が常態化し、休日出勤が当たり前のような環境では、心身を休める暇さえないかもしれません。休日が少なく疲れが取れないまま働いていては、業務効率も悪化し、さらに過大な負担がのしかかるという負のスパイラルに陥ります。
業務時間が著しく過大なだけでなく、関与する業務内容が極めて困難だとより過労のリスクを高めます。
難易度が高いプロジェクトの責任者になると、スケジュールの厳守をもとめるクライアントと、業務の負担軽減を要望する子会社との間で板挟み状態になり、クレームによる高度な緊張状態にさらされ続けることもよくあるシチュエーションです。
職場環境が悪い
人手不足が常態化して、一人でも欠員が出ると業務が滞る職場で働いているために、休みたくても休めない場合があります。責任感が強い人だと、自分が率先して困難を切り抜けようと努めて、余計に無理してしまう状況になることも想定されます。
長時間労働が黙認される企業だと、成果よりも長時間働いているかどうかが重視され、評価が落ちる恐怖から帰りたくても帰れず、ストレスを感じる従業員もいるかもしれません。
毎日の朝礼や日々の打ち合わせ・ミーティングに時間を取られ、肝心の業務が停滞している会社もあります。職場環境に問題がある場合、個人が改善に努めても状況が好転するとは限らず、ストレスは蓄積されます。
休日や休憩が少ない
働きすぎで心身に異常が出ている人のなかには、休日にも労働を続けていて、まとまった休みを取れていない場合もあります。
連日の労働を続けていると、業務効率が落ち、パフォーマンスも悪化する傾向が見受けられます。集中力や注意力が散漫になり、普段ならしない単純なミスの数が増えるのも一つのパターンです。
休みなく働いていても、仕事がはかどっているとはいえず、心身をすり減らすことで何とかやり過ごしている状態です。十分な休息や休憩は過労を防ぐために非常に重要なことであるため、無理をしてでも休む必要があるかもしれません。
過労にならないための6つのポイント

過労にならないためには、仕事への取り組み方やプライベートの過ごし方を見直す必要があります。
対応の方向性で意識したいポイントは、次のとおりです。
- 労働時間を見直す
- 断る勇気を持つ
- 健康的な生活を意識する
- 十分な休息を取る
- ストレス発散方法を見つける
- 誰かに相談する
それぞれ何に注意すべきか、具体的に取るべき行動について解説します。
1.労働時間を見直す
今の働き方を振り返り、労働時間を短縮する余地はないか検討してみます。人を頼るのが苦手で何でも抱え込む傾向がある人は、必要以上に仕事を増やしている場合があります。
ほかの人に仕事を振る、上司に相談するなど、周囲を頼るよう意識改革をはじめてみるのもおすすめです。
そもそも職場環境が悪いと感じるなら、転職を検討するのも一つの方法です。責任感が強い人だと業務量が少ない職場に変えたいと思うことを、逃げだと捉えてしまうかもしれません。
しかし、無理して体を壊すと元も子もないので、転職は選択肢の一つとして頭に入れておくと良いかもしれません。
残業月80時間の過労死ラインは目安の一つであり、基準に達していなくとも、疲れが蓄積していれば、突然倒れる場合もあります。労働時間を見直して、業務を効率化する意識を常日頃から持つようにすると良いかもしれません。
2.断る勇気を持つ
自分のキャパシティを把握しておくのも、過度な業務負担を防ぐ方法の一つです。これ以上仕事を引き受けると、納期に間に合わないかもしれないと感じたら、断る勇気を持つことをおすすめします。
依頼先の期待に応えられず申し訳ないと感じる人もいますが、無理して成果物のクオリティが落ちたり、結局締め切りに間に合わなかったりしては、信頼は低下してしまいます。
日頃から効率的な業務の遂行を心がけ、情報の収集に励むなど努力を怠っていないのであれば、問題ありません。
自分が仕事を断ることで周囲に迷惑がかかると思い、毅然とした対応を取るのは気を引けると感じるかもしれません。しかし、業務の負担が重すぎて、これ以上タスクを増やすのが難しくなるのは、誰でも起こりえる状況です。
依頼に応えるのは不可能でも余裕ができたときに、「何か手伝うことはありますか?」と声をかければ、同僚間、または上司との間に亀裂が入ることはありません。
仕事を断っても相手は気にもとめていない場合もあるため、断ったあとのトラブルを必要以上に恐れすぎず、無理なときは無理ときっぱりと意思を明示すると良いかもしれません。
3.健康的な生活を意識する
過労によるストレスをためないためには、睡眠や食事のリズムを一定に保ち、規則正しい生活をすることが大切です。栄養バランスの取れたメニューを心がけ、十分な睡眠時間を確保し、適度な運動を取り入れてみましょう。
また、夜遅くに食事を摂取すると朝の目覚めが悪くなり、午前中の仕事の能率が落ちる傾向があります。健康的な生活を意識してストレスに強い身体を作ることで、過労の負担を和らげられます。
ストレスの予防・解消に効果的な栄養素は、たんぱく質・ビタミンB群・ビタミンC・カルシウムなどです。なんらかの事情で外部からストレスを受けると、副腎皮質から、身体を守るためのホルモンが分泌されます。
この過程でたんぱく質やビタミンBなどの栄養素が消費されるため、日頃の食事で意識的にたんぱく質やビタミンBを摂取するとおすすめです。主食中心の外食で済ませるのではなく、肉や魚、野菜、乳製品、大豆製品などバランスよく摂取しましょう。
4.十分な休息を取る
働きすぎだと、気付かないまま心身に大きなダメージを負ってしまったり、突如燃え尽き症候群に陥ってしまったりする場合があります。
仕事をするのが快感で、我を忘れるほど没頭してしまうワーカーズハイ状態に達すると、疲れを感じられない恐れもあるため注意が必要です。
自分では休まなくても問題ないと思っているときも、意識して休むことが大切です。1日数時間程度の小休止ではなく、日・週単位で十分な休息を取るように努めてみます。疲労の程度や疲れを感じている部位に応じて、リフレッシュの仕方を変えられるとなお効果的です。
精神的な疲労の回復が目的なら、ランニングや旅行など動きを取り入れた過ごし方が好ましいといわれています。忙しくて休む時間が取れないと感じているなら、休みを中心にスケジュールを組み立てる意識を持つのもおすすめです。
集中力や生産性を維持するには、どの程度のスパンで休暇を入れるべきか考え、休みを軸に仕事のスケジュールを埋めます。疲れ切った状態で休んでも、朝から晩まで寝るだけのようなリフレッシュにはほど遠い過ごし方で、せっかくの休日が無駄に終わる場合もあるためです。
5.ストレス発散方法を知る
自分が楽しめる趣味や創造的活動で、ストレスを自分でコントロールすることも重要です。読書や映画鑑賞、楽器の演奏、スポーツ、ゲームなど、人によって魅力を感じる娯楽の種類はそれぞれです。
リフレッシュ方法がないと、仕事で感じたストレスが蓄積され、キャパシティを超えて心身の不調として現れるリスクが高まります。
日々高ストレスの環境にさらされているなら、休日はいかに仕事のことを考えないかが重要です。日常を忘れられるほど没頭できる趣味を見つけることで、過労による健康リスクを軽減させられます。
コミュニティに所属し、共通の趣味を持つ人と関わりを持てるようになれば、休日がより充実します。
6.誰かに相談する
働きすぎて心身に異常がでている、またその傾向があるにもかかわらず、まだ自分は大丈夫であると客観的にみられなくなってしまうことも考えられるため、周囲に相談することも大切です。
過労による悩みは、深刻であるほど他人に打ち明けにくく感じるかもしれませんが、相談によって気持ちが楽になり、心強い味方が得られたと安心感を抱く場合もあります。
めまいや頭痛などの自覚症状がなくても、ミスが増えた、もしくは生産性が落ちてきたと感じるなら、早めに上司や同僚に相談すると良いかもしれません。
人間関係や残業を黙認する社風など職場自体に問題がある場合や身近に相談する相手がいない場合など、心の専門家であるカウンセラーを頼るのも一つの手です。
過労の初期症状を理解しておこう!

過労の初期症状は、一見風邪のような軽い症状から始まりますが、放置を続けると心臓や脳にまで悪影響が出て、最終的に死に至る恐れもあります。突然死をはじめ、気付いたときには手遅れとなる場合も考えられるため、違和感や不調を感じたタイミングで第三者に相談するのがおすすめです。
過労状態の人は働きすぎを自覚しながらも、病院に行く時間が取れず悩みを抱え込んでしまう場合も少なくありません。「過労によるストレスで仕事に集中できなくなってきた」「朝仕事にいくのが億劫に感じるようになった」などの悩みがあるなら、ぜひGARDENへの相談をご検討ください。
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