気分の浮き沈みが激しい場合、ストレスや病気が原因かもしれません。気分の落ち込みや不安が心身に不調をきたしているのであれば、放置せず適切に対処する必要があります。
今回は、気分の浮き沈みが激しい原因や考えられる7つの病気、7つの対処法について解説します。
気分の浮き沈みが激しい原因とは
気分の浮き沈みがあるのは、自然なことです。人間は、嬉しいことがあれば幸せな気持ちになり、悲しいことがあれば落ち込んでしまいます。
しかし、気分の浮き沈みが激しい場合は、心や体がストレスを感じている可能性があります。ストレスがたまると、嫌なことやつらいことがあった際、ネガティブな気持ちが顕在化して気持ちが沈んでしまいます。
真面目で責任感が強い方や、理想が高く完璧主義な方は、とくに強いストレスを感じやすいのかもしれません。
「もっと頑張らないと」「周囲の期待に応えないと」といった気持ちから、頑張りすぎてしまい、ストレスがたまってしまいます。その結果、気分の波が激しくなってしまう、というわけです。
また、ホルモンバランスの乱れや、病気が原因になっている場合もあります。
気分の浮き沈みが激しいときに考えられる病気
日常生活に支障が出るほど気分の浮き沈みが激しい場合は、心身からのSOSかもしれません。
以下のような異変が見られるときは、病気が疑われます。
- 睡眠不足が続いている
- 寝ても寝ても寝足りない
- 体が重く、外に出る気力が湧かない
- 食欲がない
- 過食してしまう
- 感情のコントロールができず、自傷行為を起こそうとしてしまう
当てはまるものがあったら、あなた自身を守るために医療機関を受診しましょう。
ここでは、気分の浮き沈みが激しいときに考えられる病気を7つ紹介します。
- 双極性障害
- 非定型うつ病
- 不安障害
- 適応障害
- ADHD
- 統合失調症
- 月経前不快気分障害(PMDD)
- 月経前症候群(PMS)
双極性障害
双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。躁うつ病とも呼ばれます。
躁状態では気分が高まって活動的になり、うつ状態では気分が落ち込み無気力になるのが特徴です。両極端な状態をいったりきたりするため、気分の浮き沈みが激しくなります。
以下のような症状が見られる場合は、双極性障害の可能性が高いです。
<躁状態>
- 睡眠時間が少なくても元気に活動できる
- 自信に満ち溢れ、なんでもできそうな気がする
- 買い物やギャンブルで大金を使ってしまう
- 頭がはたらき、アイデアが次々と湧き出てくる
- おしゃべりになる
- 性的に奔放になる
<うつ状態>
- 何もやる気が起きない
- 体が動かない
- 眠れない/寝ても寝ても眠い
- 食欲がない
- 趣味が楽しくなくなる
非定型うつ病
非定型うつ病とは、楽しいことや好きなことには活動的になれるものの、それ以外には無気力になってしまう病気です。20〜30代の若い女性に多く見られ、「新型うつ病」「現代うつ病」とも呼ばれます。
非定型うつ病が従来のうつ病や双極性障害と異なるのは、好きなことなら前向きに取り組める、という点です。たとえば、「仕事に行く気力が湧かず欠勤が続いているが、土日は外出できる」という場合は、非定型うつ病の可能性があります。
周囲から「自分勝手な人」と思われやすく、病気であることに気づきにくいのが特徴です。
不安障害
不安障害とは、過度な不安や心配を抱え、日常生活に支障をきたす病気です。ささいなことにも強い不安を感じてしまうため、ストレスがたまり、気分が落ち込みやすくなります。過剰なストレスから、体に不調が出ることも多いです。
不安障害は、さらに以下の3つに分類できます。
- 全般性不安障害
- 社会不安障害
- 恐怖症
本人が不安障害に苦しんでいても、周囲が「それくらい大丈夫」「心配するほどのことでもないのに」と軽く考えてしまう可能性が高いようです。
以下のような症状が見られる場合は、不安障害の疑いがあるため、病院を受診しましょう。
- ささいなことにも強い不安を感じてしまう
- 緊張状態が続き、体が休まらない
- 頭痛や便秘、下痢などの不調が続く
- めまいがある
- 動悸が気になる
適応障害
適応障害とは、環境にうまく適応できず、ストレスから不安や無気力、抑うつといった症状があらわれる病気です。
適応障害では、うつ病と異なり、ストレスの原因を取り除くと症状が落ち着くことが多いようです。たとえば、職場環境が原因である場合は、家にいる間や休日に外出している間は、症状が改善します。
適応障害を治療するためには、ストレスの原因を特定し、取り除くことが大切です。
ADHD
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の一種です。
ADHDの方は、気分の浮き沈みが激しく、感情をうまくコントロールできない傾向にあります。
ADHDは先天的な特性であるため、完全に治せるものではありません。しかし、薬で症状が緩和したり、治療によってADHDとの向き合い方がわかったりすることがあります。
気分の浮き沈みや抑うつといった症状が前面にあらわれている場合、ADHDであることに気づきにくいため、注意が必要です。
以下のような特徴に当てはまる場合は、ADHDを疑いましょう。
- 忘れ物やケアレスミスが多い
- 時間の管理ができない
- 優先順位を決められず、マルチタスクが苦手
- 思ったことをすぐに口に出して相手を傷つけてしまう
統合失調症
統合失調症は、幻覚や幻聴、妄想といった症状があらわれる精神疾患です。遺伝的な要因と、環境的な要因の双方によって起こるとされています。
統合失調症の症状は、陽性症状・陰性症状・解体症状・認知障害の4つに分けられ、それぞれの症状は以下のとおりです。
<陽性症状>
- 妄想
- 幻覚
- 幻聴
<陰性症状>
- 感情表現が減少する
- 言葉数が減少する
- 喜びを感じられなくなる
- 他者との関わりに興味がなくなる
<解体症状>
- 話にとりとめがなく、話題が次々に変わる
- 子どもじみた行為をしたり、硬直した姿勢を崩さず、周囲の人が体を動かそうとすると強く抵抗する
<認知障害>
- 集中力や記憶力、計画能力などが欠如し、日常生活や仕事に支障をきたす
月経前不快気分障害(PMDD)
月経前不快気分障害(PMDD)は、生理前に不安やイライラといったネガティブな気持ちが強く出てしまう病気です。
後述の月経前症候群(PMS)では、心身にさまざまな不調があらわれます。その中でも心の不調が際立って見られる場合は、月経前不快気分障害の可能性が高いかもしれません。
生理前に以下のような症状が見られる方は、月経前症候群を疑いましょう。
- イライラして怒りっぽくなる
- 気分が激しく落ち込む
- 突然悲しくなり、涙が出る
- 強い不安や緊張を感じる
月経前症候群(PMS)
月経前症候群(PMS)は、生理前に生じる心身の不調のことです。原因は明らかになっていませんが、ホルモンバランスの乱れが原因と考えられています。
生理前になると、普段よりもイライラしやすくなったり、ささいなことで悲しくなったりする方は多いのではないでしょうか。生理前は、体にも不調が出やすいため、よりネガティブな気持ちになってしまう可能性が高いかもしれません。
月経前症候群の症状には、個人差があります。「生理前は仕方がない」とある程度割り切り、自分を労ることが大切です。症状が気になる場合は、我慢せずに病院を受診しましょう。
気分の浮き沈みが激しいときの7つの対処法
気分の浮き沈みが激しいときは、以下を試してみましょう。
- 生活リズムを整える
- 質の良い睡眠をとる
- ぬるめのお湯で入浴する
- 体を動かす
- 好きなことをする
- マインドフルネスを取り入れる
- 誰かと話す
ただし、病気が原因の場合は、自分で気分の波をコントロールすることは難しいです。「自分の頑張りが足りない」「心が弱い」などと考えて自分を責めるのではなく、病院を受診しましょう。
以下では、気分の波を抑える7つの対処法を解説します。
1.生活リズムを整える
心と体を整えるためには、生活リズムを整えることが大切です。
朝はカーテンを開け、日光を浴びましょう。日光を浴びると、体内時計を調整できます。また、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンが分泌され、ポジティブな気持ちが湧き起こるのもメリットです。
朝にセロトニンが分泌されると、日没のタイミングでメラトニンが分泌されます。メラトニンは、副交感神経を優位にさせ、心身をリラックスさせるはたらきを持つホルモンです。夜にリラックスできれば、自然に眠るモードに入り、体内リズムが整います。
2.質の良い睡眠をとる
質の良い睡眠も、心身の健康のためには不可欠です。睡眠の質が悪いと、途中で目が覚めてしまったり、なかなか寝つけなかったりするため、寝ても疲れがとれません。体が休まらなければ、ストレスや体の不調につながってしまいます。
質の良い睡眠をとるためには、寝る前の習慣がポイントです。寝る前のカフェインやアルコール摂取は控えるのがよいでしょう。また、夜は強い光を浴びないようにしましょう。
白熱灯の間接照明に切り替えたり、寝る前にスマホやパソコンを見ないようにするのが効果的です。なかなかリラックスできない場合は、アロマを使うのも良いかもしれません。
3.ぬるめのお湯で入浴する
寝る前にリラックスしたり、体の不調をやわらげたりするためには、入浴も重要です。少し面倒でもシャワーで済ませるのではなく、お湯を張って入浴しましょう。
入浴すると、体が温まり、血行がよくなります。血行が改善すると、必要な栄養素が全身に行き渡るため、体の不調も改善しやすくなります。温まることでリラックスでき、眠りにつきやすくなるのもメリットです。
入浴の際、お湯の温度は38~40度のぬるめに設定しましょう。お湯の温度が高いと、お風呂にゆっくりつかることが難しくなります。体の表面だけが温まった状態で、お風呂から出てしまう可能性が高いためです。
また、熱すぎるお湯は心臓にも負担をかけるため、ぬるめのお湯で入浴しましょう。
4.体を動かす
日中に適度に体を動かすと、体の緊張がほぐれ、夜にぐっすり眠れるようになります。
また、運動をすることで気分転換やストレス発散につながり、気分の浮き沈みが落ち着くこともあるでしょう。運動後の爽快感で気分が晴れやかになったり、セロトニンが分泌されて前向きな気持ちになれたりする効果もあります。
運動といっても、毎日激しい運動をする必要はありません。1日20分程度の体が温まり、軽く汗ばむ程度の軽い運動で、たとえば、ランニングやウォーキング、ヨガやストレッチがおすすめです。
5.好きなことをする
好きなことをして楽しむことも、感情を落ち着かせるためには重要です。
好きなことに熱中している間は、嫌なことやストレスも忘れられます。また、自己肯定感が高まって自信を持てるようになったり、適度な疲れから寝つきがよくなったりする、というメリットもあるようです。
同じ趣味を持つ仲間を見つけることもおすすめで、つらいことがあっても、自分らしさを発揮できる居場所があれば、気分を落ち着かせられます。
6.マインドフルネスを取り入れる
過去や未来に対する不安に苦しんでいる方は、マインドフルネスを取り入れると良いかもしれません。
マインドフルネスとは、今この瞬間に意識を向け、集中することです。ストレスを緩和させるほか、集中力や記憶力を向上させ、仕事のパフォーマンスを高める効果があるとして、ビジネスシーンでも注目されています。
マインドフルネスを取り入れるためには、雑念を捨て、呼吸に集中できる瞑想がおすすめです。今だけに集中しながら瞑想を行うことで、心身が整い、ストレスを軽減できます。
ただし、以下に該当する方は、マインドフルネスが逆効果になってしまうリスクがあるため注意が必要です。
- 不安な気持ちが非常に強く、頻繁にネガティブな気持ちに襲われている
- 過去のトラウマが原因で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症している
- 精神疾患を抱えている
- 自傷行為をしたことがある
これらの方がマインドフルネスを取り入れると、瞑想中に過去のトラウマを思い出してしまったり、ネガティブな気持ちを強く意識したりする可能性があります。
とくに、精神疾患やPTSDの治療を行っている方は、事前に担当医やセラピストに相談しましょう。
7.誰かと話す
ストレスや不安な気持ちを解消するためには、誰かと話すことも大切です。
もやもやした気持ちや不安を誰かに吐き出した後、スッキリしてネガティブな気持ちがやわらいだ、という経験がある方もいるかもしれません。これを「カタルシス効果」といい、「心の浄化作用」とも呼ばれます。
話すことでストレスを緩和させることは、心理カウンセリングでも活用されているほど、効果が期待できる手法です。
ネガティブな気持ちは溜め込まず、積極的に言葉にして誰かに話すと良いかもしれません。このとき、自分の話を真剣に聞いてくれ、本音を吐き出せる友人を選ぶことが大切です。
周囲に相談できる人がいない方や、友人に相談することに抵抗がある方は、カウンセラーに相談するのがおすすめです。
カウンセラーは心の専門家であり、相談者に寄り添ってしっかり話を聞いてくれます。気持ちを整理できるよう親身にサポートしてくれ、ポジティブに物事を考えるためのきっかけをくれる、心強い存在です。
気分の浮き沈みが激しいときはカウンセリングを受けてみよう!
気分の浮き沈みがあるのは自然なことですが、浮き沈みが激しい場合は、ストレスや病気が原因である可能性が高いかもしれません。
心身からのSOSだと考え、適切に対処することが大切です。とくに、病気が原因である場合は、早期発見・早期治療が欠かせません。ひとりで抱え込まず、病院を受診することをおすすめします。
気分の浮き沈みを解消するためには、カウンセラーに相談できるサービスを活用するのも効果的です。
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